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窃盗症TWO 古生物としてのクレプトマニアと現代の医学と法学
(「転」からの続き)
結
401
三度目の確認になるが(1st: 「起」の1、2nd: 「承」の211)、本稿で堅持している基本方針をあらためて示す。
窃盗症の被告人を擁護も非難もしない。本稿はこの立場を堅持して進める。
402
このことはいくら強調してもし過ぎることはない。擁護か非難か、どちらかを前提としてしまえば、それは論点先取であって、窃盗症についての責任能力論として成立しない。
403
現実には我が国の裁判所は、窃盗症の被告人を非難するという結論をあらかじめ設定したうえで、その結論を正当化する判示を重ねてきたことは「承」で示した通りである。
404
何十年も続いていたそんな状況に大きな一石を投じたのが『窃盗症論1 1審で心神耗弱が認定された窃盗症の一例』に詳述したcase TLの裁判であった。
405
Case TLの裁判が終結したのは2022年の差戻審(東京高裁)である。そこでは、1931年の大審院で責任能力の事実上の定義の中に示された法的概念としての「行動制御能力」と、医学概念としての「衝動制御能力」の関係が、90年の断絶を経て、ようやく法廷で正面から論じられたのである。

図85 年表: 刑法施行、昭6大審院判決、そしてTL差戻審